経営と開業の事例 #21 戸 田市商工会トップメニューに戻る
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管理職苦労話「誰も従わない課長」からの生還


 中間管理職というと、苦労が多い割に報われず、つらい立場であるという印象がある。

 しかし、企業では彼らがうまく働いてくれないと全体に支障が出てしまう。IT化の影響で、仕事のスタイルが変わって行くにしても、中間管理職の重要性はそう急には無くならないだろう。

 また、小規模な企業が大きく発展して行く際には、今まで必要なかった中間管理職の重要性が急に増してくることがある。とりわけ歴史の浅い、新しい企業では、古い企業のように先輩から後輩へ受け継ぐ管理ノウハウが無い事が多いので途方に暮れる事もあり得る。

 今回の事例は経営者ではなく、企業の中間管理者から聞いた内容だが、経営にとっての重要性は大きいのでご紹介することにした。


 熱血課長・誰も言うことを聞いてくれない

  私が新入社員としてスタートしてから、課長補佐の時代まで、仕事は充実していました。

 上司の期待にも応え、熱血社員として仕事に取り組んできました。おかげで、上から引き立てられ、38歳で課長へ昇進出来ました。

 課長になって最初に持った部下・課長補佐は私と同年齢・同期入社の男でした。彼の仕事の態度は不幸にも「やらない、決めない、考えない」でした。

 私としては、「私ができる仕事、作業、考え方が、なぜ勤務年数が同じである「あなた」にはできないのか」と不平不満で、仕事の指示はどんどん出しましたが、指示どおりにすすみません。指示を出してもそれが守られないので、そのうち誰も私の言うことを聞いてくれなくなりました。結果として、仕事を私が自分でやるしかなくて、会社に寝袋を持ち込んで睡眠時間を削って仕事をする有様でした。

 当時は苦しくて会社をやめたいとか、課長を返上したいとか思い、神経症寸前まで行ってしまいました。

 私は生来短気で、ものをはっきり言う性格なので、あるときその部下に「同じ年齢で、同じ年数同じ会社に勤めていて、おれに出来ることがなぜおまえにはできないのか」と怒りました。すると、支社長に呼ばれて私がひどく叱られました。「部下の自信をなくさせてどうする。それが課長の役割か。課長は部下に気持ちよく仕事をさせるための役だ。部下に「できるぞ」という意識を植え付けるのが課長の仕事だ。ああいう動かない人間を下に持つのは確かに大変だ。しかし、人事はおまえにそういう試練を与えているのだ。人事はおまえがああいう男をどう扱って仕事をさせるかを見ているのだ。だったら、その期待にこたえて見ろ」と言われたのです。

 それから支社長以下いろいろな人たちに教わりながら、ようやく管理職としてのツボを飲み込めました。まだまだ未熟ですが、今の私の管理職ぶりをご説明します。

 能力上問題のある部下について

 能力が標準よりかなり下回る人、問題になるレベルで「できない人」の場合、「標準以上」を期待することは難しいのです。その人にできる範囲の仕事をしてもらうしかありません。能力を伸ばすことをあきらめるのではありませんが、「今その人ができない仕事」を今すぐその人にやらせるのは無理なのです。出来る範囲でやらせるしかない。一度に多くの種類の仕事を与えず、ひとつひとつをじっくりやらせた方がいい。できない人にやれ、やれと言って、それでも「できない」状態がつづけば、「自分はできない」という意識が定着してしまう。それよりも「できる仕事」を一つずつやってもらえば、それなりのレベルで「できる」感覚をもてるのです。小さくても「出来た」「出来る」感覚を味わえば、それが次の意欲・向上意欲につながります。それこそが「できる人」への階段です。

 教える、という事

 部下に「やれ」と言う前に、やれる状態になっているか、やれるように教えているか、理解してもらっているかを考えること。部下ができなかったとしたら、やり方を教えていない上司が悪いし、仕事の与え方が悪いんです。

 自分ができるから、人もできるはずだ、と思ってはいけないんです。誰でも最初はできないし、それを教えるのが上司であり、先輩です。できないなら、なぜできないのか原因を一緒に考えて、教えられるものは教えてあげる。「できない道」を抜け出す方法を考えてあげる。できないで苦労している人に、ただ「やれ」と言うだけでは「できない迷路」から抜け出せないんです。

 

部下にキーマン

 部下の中で「できる人間」は、キーマンとして活用することです。キーマンを作って彼らを中心に仕事を組み立てていけば課全体のプラスになります。私の課にいる課長補佐2人は非常にできる人間です。彼らには「課の営業計画を作れ」と指示します。自分で作っちゃあいけないんです。彼らに作らせないと、彼らが伸びなくなってしまいます。仕事を与えるのが訓練です。それをやっておかないと、彼らが課長になったときに困るし、組織自体が困ったことになってしまう。

 ものによっては、私が直接作る計画や方針がありますが、それらもキーマンに相談して作ります。もちろん相談することによって、彼らの能力アップをはかり、同時に彼らの知識を活用するためです。

しかし、計画というものは常にそのまま使えるものではありません。情勢の変化や読み違い、不測の事態で修正が必要になることもあります。そういう時に「おまえにも相談した計画じゃないか。修正にも協力しろ」と言えるからです。共犯者づくりみたいなものです。

 目標管理

 課長は課全体の労務管理、実績、方針を任されています。従って、まず目標を浸透させる必要があります。目標はあいまいなものでなく、明確である必要があります。目標を達成するには全員の意思統一が必要で、それは自分の片腕・課長補佐と相談しながら作ります。課長補佐は課長に比べると一般職員に近いので、全員の雰囲気をとらえることができます。まず、私の案を彼ら全員に与え、一日待ちます。その間に「なにか思うことがあったら言いなさい、書きなさい。それを元に決定しますから。」という姿勢です。

 目標については課長補佐がレベル10で一般職員がレベル8,というランク付けは、私はしません。どっちも10の均等目標にします。それも一般職員の全社平均レベルが8なら、課長補佐の能力に合わせて10にします。課長補佐は営業のほか、管理業務などもしているので、そのうえに与えられる営業目標です。従って一般職員は課長補佐並の目標をであっても達成可能なはずだ、という理屈で、結果としては当支社の底上げになります。

 一度立てた目標を途中で変えることはしません。「達成しそうだから、さらに目標値を上乗せ」これをやると、達成感が無くなってしまいます。問題のある部下には、彼に出来る仕事を一つずつ与えて達成感を感じさせる−のと同じく、小さくても達成感を味わうことが重要だからです。

 目標と実績は数字で把握できるようにします。「進捗状況個人別グラフ」は毎日作って、私の机の上に開いて置いておきます。見たい人は見て下さいというスタイルです。回覧はしません。回覧しなくても、みんな進捗は気になるので、私の机の上に見に来ます。

 

 チェックと評価

 目標と計画を作って、仕事ができるようにして上げるのが管理職の仕事の第一、第2は彼らがちゃんとやっているかどうかチェックする事です。私は、朝1時間、昼休み後の1時間、夕方1時間、なにもしないで部下の仕事をじっと見ています。私の課は、私を除いて職員16名です。彼らの仕事ぶりをチェックするにはそれだけの時間が必要です。わたしは今でも「熱血型・行動型」なので、関係先回りなどにすぐ行きたくなるのですが、前の支社長に「動くな。座っていろ」と、しばしば引き留められました。「課長は堂々と座っていろ、部下が何をやっているのかを見るのが課長の仕事だ」と言うのです。逆に課長が動きすぎて、「何でも課長がやってくれる」と部下が思うようになったら部下が止まってしまいます。

 部下のチェックはこまめにして、絶対に手を抜かないこと。たとえ自分の仕事のうち事務を先送りにしても、部下の観察と指導は手を抜かないことです。

 チェックは毎日です。業務日誌のチェックも毎日。その日に言うべき注意はその日に必ず言います。

 目標は明確に与え、計画を立てさせます。それぞれの職員が計画をどう進めるかは個人のやり方にある程度任せます。しかし、ここからここまでの範囲ならどの方法でもいいけど、はみ出しちゃだめよ、という限度があるのでそれはチェックします。それらは全部課長の仕事です。

 目標達成度は数字で把握でき、評価の対象になりますが、評価はそれだけでなく多面的に行います。評価基準はいろいろあります。対人交渉の得意なタイプ、事務的能力に優れたタイプ、これらは部下のお客さんへの応対を見ていればわかるようになります。長所は認めて、よくやった人間には「支社長にいっておくから」と一言いっておくことが大事です。

 部下にとって、上司の評価は待遇・昇進・異動に影響する重大事です。かれらも真剣だし、意に添わないと上司である私に愚痴も言いたくなるものです。異動の時期には愚痴を聞かざるを得ない状況にもなります。だからこそ、部下の仕事のチェック・評価は手を抜けない大事な仕事です。 

 

 楽しげに管理する

 能力給を採用する企業が増えているようですが、当社の場合はまだ導入していません。

 まだの企業の方が多いでしょう。そういう企業では、給料が同じ分、実質的に公平になるように仕事をさせなければなりません。完璧にはできなくても、より、公平に近い状態にさせる。残業などの労務管理を含めてうまくやらないと不公平感が出て、職場の雰囲気が悪くなり、モラール(意欲)も低下します。

 年功給の場合でも、がんばって仕事をし、人より早く昇進すれば、当然、給料は高くなります。しかし、上役がつまらなそうに、つらそうに仕事をしている場合は違いますね。

 給料は欲しいけど、昇進したくない、という人が出てきます。だから、管理職は楽しげに仕事をしなくてはならない。本当はつらくても。

 望ましい管理職はニコニコしながらキツイことを言える人でしょう。さらに言えば、きついことを言うときに「あんたのために言っているのよ。あんたが心配だから言うんだよ」というせりふを言えること。実際にそういう姿勢で管理をすることです。

部下を守る

 上司は部下を守らなければなりません。労務管理を含めて、仕事がきちんと出来るように環境づくりをする。目標達成が遅い部下が居たら、別室に呼んで一緒に対応を考えてやる。私は熱血課長を自称していますが、今の時代では、みんなの前で叱りとばすというのは、良い管理手法とは思いません。本人のプライドを守って、かつ目標を達成できるように考えてやります。

 部下が何かの相談に来たら、課長は自分の仕事を中断して即、相談に乗ってあげること。

 部下からいろいろな報告を受けたり、相談された内容が、すべて筒抜けで上の上司に伝えられちゃうよ、という印象を与えてはいけません。とりあえず私を信頼して伝えてくれたことは、一旦私が処理する、腹にしまっていてくれる、と思われていないとうまくいきません。もちろん、私も必要なことは直ちに上司に伝えます。しかし、場合によっては当面知らないフリをしていて下さい、よろしい、うまくやってくれ、という上司との信頼関係も求められます。

 部下を守るという事では、忘れられない事がありました。ある年、支社全体がものすごい多忙の嵐に襲われました。一般職員も休日無しのフル回転。それを命じているのは支社長です。その支社長は彼自身非常に多忙だったにも関わらず、我々課長に「おれ(支社長)のために仕事しなくていい。おれのために仕事をする暇があったら、部下の職員のために仕事をせい」と言ったのです。その「多忙の嵐」の間中、一般職員からも不平の声はまったく聞かれませんでした。

プライド・好き嫌い・コミュニケーション・嫌われ役

 プライドを持って仕事をすること。支社長から「当支社は県内総括支社だから、プライドをもて。「当支社から異動した職員なら出来がいいだろう」と思われるんだから、しっかりやれ」と言われて励まされ、「よそに異動した部下の出来が悪ければ、元上司であるあなたの指導が悪いと思われるんだよ」と指導を受けました。

 人間には好き嫌いがありますし、自分はそれが強い方ですが、好きなタイプの部下ほど、面倒でつらい仕事をやらせるべきです。「おまえだからできるんだよ」「おまえは苦労するだろうけど、それがみんなの幸せにつながるんだよ。やってることは無駄じゃないんだよ」と言い続けてやる。「あなたの不幸はみんなの幸せ」は私の決めぜりふのひとつです。

 課全員の飲み会、支社内の課長だけの飲み会、課長全員と課長補佐全員の飲み会、課長と係長全員の飲み会、課長と一般職員だけの飲み会、課長と女子社員だけの飲み会をすべて実行し、課長はお金だけ余分に払っています。

 私の上の副支社長は、非常に苦労した事のある人で、今では支社内の嫌われ役に徹しています。トップ(支社長)は人望があり慕われなければなりませんが、嫌われ役も組織には必要です。その副支社長のおかげで、支社長も我々課長も安心して仕事をしていられるわけです。副支社長は毎日毎日いろんな注意をして職場を引き締め、飲み会にはほとんど誘われませんが、支社に無くてはならない人です。いつか自分もそういう役割をしなきゃならないと覚悟はしています。

 勤務時間中はうるさいことを言っても、飲み会ではいっさいそういう話はしません。明るく楽しく、が基本です。私はサッカーの話が得意です。

 


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